1986年に福知山線、生瀬駅、武田尾駅間に新線が開通し、87年間に及ぶ旧国鉄の線路が廃線となり、2016年11月に安全対策が終了して一般にハイキングコースとして開放されました。師走の冬枯れに近いこのコースを歩いてきました。コースは武庫川渓谷に沿って約5.5キロあり、往時は車窓から渓谷の美しさを堪能した乗客が多かったと思はれます。
生瀬側入口に掲示されていたコース案内です。
降り立ったJR生瀬駅です。
生瀬駅から国道176号線に沿って廃線入口まで約20分歩きます。
国道176号線から右にそれて、スロープ状のアスファルト路を 「神戸水道第3水道橋」を右に見ながら下っていくと廃線跡の起点に着きます。
注意書きの看板のあるコース起点です。{9時14分}
起点から廃線跡を辿って行きます。
「名塩川橋梁」です、安全対策のため橋梁の上は歩きやすいように、両サイドには手摺が設置されています。左側には巡回路の名残が残っています。 {9時16分}
振返ると「神戸水道第3水道橋」と「中国自動車道」を眺めることが できます。
右側には武庫川が、それに寄添うように廃線跡が続いています。
ところどころに鉄道設備がそのまま残されていて往時の姿を想像させます。
二つ目の鉄橋「どん尻川橋梁」です。{9時21分}
右手には「高座岩」と名称される大岩石に圧倒されます。{9時23分}
錆びついた速度表示板も線路脇に見えます。
「新4号トンネル」 318メートル 「北山第一隧道」が現れました。歩くと結構長いトンネルで、ヘッドランプを頼りに枕木や砂利に足を取られないように慎重に通過しました。トンネル内には待避所が何ヶ所かそのままの姿を残していました。 {9時24分}
トンネルの出口には鉄製の「待避所」が川に張り出して残っていました。
枕木がそのまま残置されていて、廃線跡という思いを終始感じさせます。
線路脇の柿の木が青空に映えていました。
「4号トンネル」 413メートル 「北山第2隧道」です。廃線跡のトンネルは全部で6本で、このトンネルが一番長いトンネルでした。{9時45分}
全てのトンネルに共通しているのは、トンネルの下部は石積で、上部はアーチ部分を含め煉瓦積みでした、恐らく長い年月と、技術力、そして多くの労働力で完成されたものと思はれ、その労苦に頭が下がる思いです。
「4号トンネル」出口です。{9時52分}
「4号トンネル」を抜けると、武庫川渓谷のハイライトと言うべき渓谷美を見せてくれます。「百畳岩」「寄合岩」など多くの巨岩、奇岩が目を楽しませてくれます。
「溝滝」(みぞたき)です、 名所案内「塩渓風土略記」によると、「岩四方より押し出て川幅狭くなる所、男滝と女滝があり、淵の底は千尋計り難し」と記述されていてかなり深い滝壷であったようです。
名残の紅葉です。
線路脇に枕木がそのまま放置されています。
「5号トンネル」 149メートル 「溝滝尾隧道」です。{10時7分}
「5号トンネル」出ると、目の前に「武庫川第2橋梁」が現れます。これまで鉄路は武庫川右岸に沿って敷設されていましたが、この橋梁で川を渡り左岸に鉄路が移ります。{10時10分}
橋梁から武庫川の上流を眺めています。
「武庫川第2橋梁」を渡るとすぐ「6号トンネル」 307メートル 「長尾山第一隧道」となります。{10時12分}
結構長いトンネルで、抜けると武庫川が左側になります。
やがて「親水広場」{10時26分}と名付けられた広場が現れます、桜の樹木が多くあり、川縁にも下りられるようになっていて、宝塚市民の憩いの場となっているようです。
また「桜の園」へと山道が続いています、手頃なハイキングコースのようです。このあたりまで「武田尾温泉」の湯治客がぶらぶらと散歩に来られるようです。
「7号トンネル」 147㍍ 「長尾山第2隧道」です。出口の明りが見える短いトンネルです。SLの時代には、トンネルの度に窓を閉めたり開けたりと忙しかったことでしょう。{10時27分}
「8号トンネル」の手前から「7号トンネル」を振返ったところです。
「8号トンネル」 91メートル 「長尾山第3隧道」です、生瀬から最後の短いトンネルです。{10時34分}
左に「武庫川」を眺めながら、廃線跡も終わりに近づきます。
「武庫川」に注ぐ支流の橋で廃線跡も終わりになりました。 (武田尾側からの入口となります。){10時41分}
現在、「県道327号」付近は大掛かりな工事が行われていて、広い駐車場も できるようです。
その一画に「武田尾稲荷神社」祠が移築されています。{10時42分}
「県道327号」に出て、途中「武田尾温泉」への橋を左手に見ながら 「JR武田尾駅」方面に向かいます。{10時46分}
「神戸水道武田尾トラス橋」(第一水道橋)をくぐると「JR武田尾駅」 は目の前です。
「JR武田尾駅」です。{10時51分}
トンネルとトンネルに挟まれた武庫川橋上にプラットホームがあります。 「道場駅方面」のトンネルです。
反対側、「西宮名塩駅」方面の「名塩隧道」です。
ホーム上から歩いてきた武庫川下流を見たところです。
廃線跡を歩いてみて印象に残ったことは、私が慣れ親しんできた嵯峨野線(山陰線)嵐山駅から保津川駅間の廃線跡と非常によく似た光景だと感じたことです。嵐山駅から保津川駅まで保津川渓谷の右岸、左岸と渓谷沿いに敷設されていた線路上を、廃線後の今は、観光トロッコ列車が運航し、乗客が渓谷美を堪能し、人気があります。新設された保津川駅は、武田尾駅と同じくトンネルとトンネルの間にプラットホームがあり、ホーム上から保津川の景色を楽しむことができます、片やトロッコ列車、一方はハイキングコースと、廃線されたその後の活かし方はいろいろですが、それぞれの特色を上手に活かして、価値あるものにして欲しいものです。